うさぎと猫と少年の夢
うさぎと貓と少年の夢
春の夕暮れ、薄紫色の空に浮かぶ三日月が、ぼんやりと光を放っていた。少年は、庭の隅にある小さな小屋の前で、膝を抱えて座っていた。彼の肩には、白いうさぎがぴょんと飛び乗り、その橫を黒貓が優雅に歩いている。
「今日も、何か面白いことがあった?」と、うさぎが耳をぴくぴくさせながら聞いた。
少年は少し考えてから、「うん、學校でね、みんなで絵を描いたんだ。僕は空を描いたよ。でも、先生が『空は青いものだ』って言うんだ。でも、僕には紫色に見えるんだ。変だよね?」
黒貓がふんわりと聲を立てて笑った。「変なんかじゃないわ。君の目には、君だけの色が見えているのよ。それが、君の特別なところなの。」
うさぎも頷いて、「そうだよ、僕たちだって、君の夢の中では話せるんだもん。普通じゃないことが、特別なんだよ。」
少年は、二人の言葉に少し安心したような表情を浮かべた。彼は、時々自分が周りと違うことに気づき、不安になることがあった。でも、このうさぎと貓がいつもそばにいて、彼を支えてくれた。
「ねえ、今日も夢を見ようよ。」と、うさぎが提案した。「君が描いた紫色の空の下で、冒険しよう!」
少年の目が輝いた。「うん、行こう!」
三人は、少年の夢の中へと飛び込んだ。そこには、彼が描いたような紫色の空が広がり、風に揺れる草花がキラキラと光っていた。遠くには、虹色の山々が連なり、その頂上には金色の城が輝いていた。
「あそこに行ってみよう!」と、少年は指差した。
うさぎはぴょんぴょん跳ねながら、「僕が先に行くよ!」と叫び、黒貓は優雅に歩きながら、「急ぐ必要なんてないわ。ゆっくり楽しみましょう。」と呟いた。
三人は、夢の中を駆け抜け、笑い聲を響かせながら、金色の城を目指した。少年は、この瞬間が永遠に続けばいいと思った。彼にとって、この夢こそが現実であり、現実こそが夢だった。
そして、夜が更け、月が高く昇る頃、少年は靜かに眠りについた。うさぎと貓は、彼の枕元でそっと見守りながら、また次の夢の準備を始めた。
彼らにとって、少年の夢は終わることがない冒険であり、その冒険こそが、彼らを結びつける絆だった。紫色の空の下で、うさぎと貓と少年の物語は、これからもずっと続いていく。